「診察は終わっているのに、カルテがまだ終わらない」。動物病院のカルテ残業は、文章を書く速さだけでなく、あとで思い出す、検査結果を探す、表記を直すといった小さな作業の積み重ねで生まれます。この記事では、診療中・診療直後・終業前の3段階に分けて、記録を残さないための7つの工夫を紹介します。
なぜカルテ作成で残業が増えるのか
カルテの残業が増える理由は、診察のたびに情報をあとでまとめて文章化し、記憶をたどりながら不足を補う運用にあります。ポイントは、後から再現しにくい情報をその場で残すことと、書き方・確認・完了の基準を院内でそろえることです。
最初に1週間だけ記録すること
いきなり全員の入力方法を変える前に、終業時に残ったカルテ件数と、残った理由を1週間だけ記録します。理由は「入力」「内容確認」「検査・画像待ち」「担当が不明」「飼い主資料の作成」など、あとで集計できる短い分類で十分です。件数だけでなく原因を見ると、テンプレートを増やすべきか、資料の保存場所をそろえるべきかを判断しやすくなります。
下のシートは、個別の診療内容や患者情報を書かず、件数・所要時間・原因だけを残す院内用のひな形です。毎日同じ時刻に記録し、最も多かった原因を翌週の改善対象に1つだけ選びます。
1週間・カルテ残業の原因記録シート
カルテ残業の原因記録シート(1週間) 記録期間: 年 月 日 〜 年 月 日 対象(診療科・担当・時間帯など): 毎日の確認時刻: 日付: 終業時に残ったカルテ: 件 完了までにかかった時間: 分 主な原因(件数) □ 入力・文章化: 件 □ 内容確認・修正: 件 □ 検査・画像待ち: 件 □ 担当・完了条件が不明: 件 □ 飼い主資料・紹介状などの作成: 件 □ その他: 件(内容: ) 翌日へ持ち越したカルテ: 件 持ち越す理由: 担当者: 次に確認する日時・条件: 1週間後の確認 最も多かった原因: 次週に1つだけ試す改善: 比較する指標(残件数/時間/修正件数など): 確認日:
「入力」と「確認」を分けて記録すると、文章作成を短くするべきか、保存前チェックや担当ルールを整えるべきかを見分けやすくなります。検査待ちなど当日中に解消できない項目は、担当者と次に確認する日時まで残してください。
診療中・診療直後・終業前の流れ
診療中:後から思い出しにくい情報を残す
数値、薬剤名、飼い主の主な訴え、次回条件など、記憶だけに頼ると確認が必要になる情報を優先します。文章を完成させることより、情報の取りこぼしを防ぐことが目的です。
診療直後:短い確認で下書きを閉じる
S・O・A・Pの空欄、処方、再診条件、飼い主への説明を確認します。複数の問題がある場合は、問題ごとに評価と計画の対応を見直します。詳しい型は「SOAPカルテの無料テンプレート」で確認できます。
終業前:未完了を人ではなく一覧で確認する
記憶や声かけに頼らず、未完了記録を一覧で確認し、担当と完了条件を明確にします。検査待ちなど当日に閉じられない記録は、次に確認する日時や条件を残します。
残業を減らす7つの工夫
1. よく使う型(テンプレート)を用意する
主訴や処置ごとの定型文を用意し、当てはめた後で患者ごとの差分を確認します。共通部分を毎回ゼロから入力しない運用にします。
2. その場で要点だけ残す
診察中や直後に、キーワードや数値だけでも記録しておくと、あとで思い出す時間がなくなります。
3. 院内で略語・書き方のルールをそろえる
スタッフごとに書き方がバラバラだと、確認や修正に時間がかかります。最低限の表記ルールを決めておきます。
4. 検査・画像はカルテに直接ひも付ける
あとで探す時間をなくすため、その場で患者カルテに画像や結果をまとめておきます。
5. 次回やることを一緒に書いておく
「次回:血液検査」などを記録しておくと、来院時に迷わず、結果的に診察もカルテもスムーズになります。
6. 定型の説明はテンプレ資料にする
飼い主への説明も、毎回ゼロから作らず、定型資料をベースに個別化すると時短になります。
7. 音声入力・録音で下書きを作る
診察の会話からAIでカルテの下書きを作る方法もあります。録音やデータの扱いを院内で定め、患者、数値、薬剤名、評価、処方、再診条件を獣医師が保存前に確認します。導入時は「音声入力カルテのチェックリスト」も利用できます。
改善を判断する4つの指標
- 終業時に未完了だったカルテ件数
- 翌日へ持ち越した件数と理由
- 修正・差し戻しが必要だった項目
- テンプレートや音声入力を使えなかった場面
まず1つの診療内容や1人の担当者で試し、1〜2週間後に同じ条件で比べます。入力時間だけを追うのではなく、確認不足や修正が増えていないかも同時に見ます。
「書く時間」を仕組みで減らす
テンプレートやルールの工夫は今日から効果がありますが、件数が多い病院では限界もあります。より根本的に減らすなら、カルテを「一から書く」前提を変えるのが有効です。
まとめ
カルテの残業を減らす基本は、「書く量を減らす」「あとでまとめない」の2つです。まずはテンプレートとその場記録から始め、件数が多いなら録音での下書きも検討してみてください。あわせて「SOAPカルテの書き方」「電子カルテの便利な使い方」も参考になります。
よくある質問
動物病院のカルテ残業は、何から見直すとよいですか?
まず1週間だけ、終業時に残った件数と理由を記録します。最も多い原因を一つ選び、テンプレート、その場記録、担当ルールのいずれかを小さく試します。
診療中にカルテを完成させる必要がありますか?
必ずしも完成を目指す必要はありません。後から思い出しにくい情報をその場で残し、診療直後に短時間で確認・補完する流れが現実的です。
音声入力やAIの下書きを使うときの注意点は?
録音やデータの扱いを院内で定め、数値、薬剤名、評価、処方、再診条件を保存前に確認します。AIの下書きをそのまま確定せず、獣医師の確認と修正を運用に含めます。